糖尿病とは、文字だけ見ると尿に糖が出る病気という感じがします。では何故、尿に糖が出るのでしょうか。人間の血液中の糖分は空腹時で110mg/dl未満、食後でも140mg/dl未満にコントロールされています。これは胃の裏側にある膵臓という臓器から分泌されるインスリンというホルモンが調節しているからです。
糖尿病はこのインスリンが、
(1)分泌されない
(2)分泌されているけれども作用しない
という2つの原因で起こります。
食事で摂取した糖分は体内でエネルギーとして使われることになりますが、インスリンが作用しないと糖分が利用されずに血液中に余ることになります。
そしてこの余った糖分が尿の中に出てくるのです。
つまり、
(1)食べたものをエネルギーとしてきちんと利用していないこと
(2)異常な高血糖の血液が流れることにより合併症を起こすこと
この2点が糖尿病を治療する目的です。
(1)朝の空腹時血糖値、つまり前日から食事を取らないで行なった検査の血糖値が126mg/dl以上。
(2)食後など、適当な時間に行なった血液検査の血糖値が200mg/dl以上。
(3)経口糖負荷試験の2時間値が200mg/dl以上。
以上の1つでも認めた状態を糖尿病型と言います。別の日にもう1回、糖尿病型を示すと糖尿病と診断されます。
ただし下記の基準を満たすと、糖尿病型を1回認めただけでも糖尿病と診断されます。
(1)口渇、多飲、多尿、体重減少など糖尿病の典型的な症状がある。
(2)糖尿病網膜症の存在
(3)ヘモグロビンA1cが6.5%以上
(4)過去に糖尿病型を示した資料がある。
(1)食事療法
まず標準体重を計算して、必要カロリーを割り出します。
計算方法
標準体重 身長(m)×身長(m)×22
軽労作の人(デスクワーク中心の人) 標準体重×25~30kcal
中等度の労作の人(立ち仕事が多い人) 標準体重×30~35kcal
重労働の人(力仕事が多い人) 標準体重×35kcal
この必要カロリーを各栄養素に振り分けます。振り分け方は炭水化物、脂質、蛋白質をそれぞれ、50~60%、25%以下、15~20%というようにします。何をどれ位食べればいいかは「食品交換表」という本が参考になります。
(2)運動療法
歩行やジョギング、水泳などの有酸素運動がブドウ糖を効率よく消費できます。少し早目の散歩を30分程度、週3回程度でかまいません。血糖のコントロール状態、合併症の状態によっては逆効果なこともありますので、ご相談ください。
(3)薬物療法
内服治療
主に5種類の薬剤が有ります。その人に合った薬剤を選ぶことになります。
・スルホニル尿素薬
膵臓を刺激してインスリンを分泌させる薬剤です。
・ビグアナイド薬
インスリンへの体の感受性を増加させる薬剤です。
・αグルコシダーゼ阻害薬
小腸のαグルコシダーゼという酵素に作用して、糖の吸収を緩徐にします。
・速効型インスリン分泌促進薬
膵臓を刺激してインスリンを分泌させる薬剤です。食前に内服し、すぐに作用が現れます。
・チアゾリジン誘導体
インスリンへの体の感受性を増加させる薬剤です。
インスリン注射
インスリン注射というと抵抗のある方が多いと思います。しかし単純に考えて、自分の効かなくなったインスリンで血糖を下げるよりも、外から補うほうが体に優しいのは明らかです。まずインスリン注射を行ない膵臓を休ませると、自分のインスリンが再び働き始めインスリン注射から離れていくのも可能なことがあります。
(1)網膜症
網膜というのは眼の奥にあり見た物が映る部分です。網膜に合併症が起こると出血が起こり、物が映らなくなります。少しずつ出血を繰り返すことで、見えなくなってしまうこともあります。どんなに糖尿病のコントロールが良くても、1年に1回、半年に1回など定期的に眼科でチェックを受けましょう。
(2)腎症
腎臓というのはお腹の中に左右で2個あり、尿を作る臓器です。尿は体内の水分調節、老廃物の排泄が大きな2つの役割です。腎臓に合併症が起こると、この機能が果たせなくなります。進行すると透析という治療を受ける必要が出てくることもあります。
初期段階で発見するために尿中のアルブミンという蛋白質の検査を定期的に行うことが望ましいです。
(3)神経障害
感覚神経障害
感覚神経というのは、「熱い」、「冷たい」などを感じる神経です。合併症が起こると、まず足の先から感覚障害が起こります。まず起こる異常は足先にしびれを感じたり、足を触ったときに1枚履いた上から触っている感じがするということが多いようです。早期であれば糖尿病をコントロールすることで症状が取れることも有ります。
自律神経障害
自律神経というのは、自分の意志では行なえない腸の動きや血圧などを調節する神経です。この神経に異常が起こると、立ち上がったときに血圧が維持できず立ちくらみが起こったり、便秘や下痢が継続するようなこともあります。